SE・ITコンサルタントのための本


IT関連の仕事をしている関係で、この分野の本はよく読みます。
このレビューでみなさんが、出来るだけ効率よく情報を集められる参考になればと思います。


根来 龍之 経営情報学会
中央経済社(2010-07)

かなり学問的な考察が多いですが、著者たちの履歴を見てみると実務経験も豊富で、そこに理論を持ち込もうとする姿勢に感銘を受けます。日本ではなかなかこのような本がないので、貴重な一冊だと思います。この本を読んで、結局ITはなんのためにあるのかということを自分なりに考えるきっかけになります。いろいろな著者の考えに一気にふれることができておすすめです。


北添 裕己
日本実業出版社(2008-01-31)

最近はSEとビジネスコンサルタントとの境目がなくなってきています。とはいえ境目が存在するのも事実です。そのあたりのことを、コンサルティングプロジェクトを多数経験している筆者の、現場の仕事に軸足を置いた語り口で明確にしてくれます。


日本のITアナリストの第一人者である著者の、ITコンサルティングに関してまとめた本。入門編ですが、全体を通してよくまとまっており、著者独特の視点もふんだんに書かれているため、なかなかおもしろい本です。コンサルティングの典型的な手順、プレゼンテーション資料や報告資料の組み立て方、プロジェクトのリスクについて、などのトピックについてフレームワークを提供してくれています。


ジェラルド・M・ワインバーグ 伊豆原 弓
日経BP社(2003-07-29)

コンサルタントの秘密の第2弾です。章立てはよくまとまっているのですが、コンサルタントの秘密ほどの迫力はなくなっています。
ただ各所になかなかおもしろい見解や、仕事をしていて”あるある”と思えるようなエピソードがちりばめられているので、読み物としてはおもしろいです。
これをもとに自分なりの道具箱を作り始めようとおもいました。


平野 雅章
日本経済新聞出版社(2007-08)



IT投資から効果を引き出すためには、組織IQが重要だということを、論文形式に傍証を用い論じてあります。組織IQが低いと、IT投資は逆にマイナスの作用があるという結論もなかなか実感できるものです。
組織IQの定義はよくできています。情報システムというものが業務改革をともなうもの、そしてその業務改革を成功させるには、情報に対する感度、情報の集積ポイント、責任の委譲レベル、意志決定の基準となる企業戦略、改革を受け入れる風土の5つの組織IQの要素が必要ということです。
企業のトップや業務改革を推進している部署の方には、ぜひとも読んで、組織IQの向上を考えていただければと思います。


Rick Craig Stefan P Jaskiel
日経BP出版センター(2004-10-22)



テストの本としては非常に良くまとまっている本。テストの基本をマスタしたい人は是非一冊手元に置いておくことをおすすめします。
テストとコストの関係、管理の方法、テスト設計の仕方などがとても詳しく解説してあります。米国での具体例が随所にコラムとして挿入されているのも、読んでいてとても楽しいです。




東レ、みずほ、シャープ、松下、昭和シェル、オムロン、シスコなどの実例を交えながら、どのようにITシステムが使われなくなってしまうか、問題のあるITシステムができあがってしまうのか、IT戦略の勘所を整理してあり参考になります。




極限までに忙しく効率化を求める現代の会社に警鐘をならす内容です。中間管理職がなぜ重要か、ゆとりを持つことがなぜ重要なのかを解き明かしてくれます。簡単に言うと、ゆとりを持ったほうがボトルネックが減り、結果的に全体の仕事は速くなるのです。早く終わることが出来るような仕事でも、忙しいほうが良いとされている企業文化の中にいると、人々は常に仕事をしているように見せかけるため、事をゆっくりやり始めるからです。プロジェクトのリスク管理についてもゆとりの視点から解説し、分かっていながら明確になぜだめなのかを説明できずにゆとりのなくなってしまう現場への、ゆとりの必要性を論理的に説明する力を与えてくれます。




プラント建設およびITプロジェクトの経験豊富な東洋エンジニアリングの著者が書いた本です。プロジェクトマネジメントの現場でのテクニックや思想がふんだんに盛り込まれています。理論を学ぶと言うよりは、思想を学んだり読み物として楽しめる本だと思います。ただ個人的には、進捗率のはかり方についてヒントになることが書いてありました。




PMI(Project Management Institute)が定めた、プロジェクトマネジメントの標準体系です。プロジェクト・マネジメントに必要なことを体系的にまとめてあります。はっきりいって非常に読みにくいですが、原典に戻るという意味では、困ったときに役に立ちます。これとあわせて解説書なども読むとより理解が深まるでしょう。PMP(Project Management Professional)の試験を受験する人は、もちろん1冊もっていなければいけません。




コンサルタントとタイトルにありますが、半分くらいは一般のビジネスに置き換えて読むことができます。大事なのは、考え抜くこととプロフェッショナルの意識を持つこと、そして「思い」を伝えるとこだと筆者は説いています。いわゆる「クール」なコンサルタントではなく、「熱い」コンサルタントになってこそ良い仕事ができるというのを筆者は「現場力」という表現で表しています。実際のコンサルティングの現場を素直に語ってくれているので、とても参考になる本でした。熱い思いはぜひ本書を読んで感じてください。


森 昭彦
日経BP社(2006-06-21)



投資効果の測定というものはITに限らず難しいものですが、この本ではIT投資効果に話題を絞って、やさしく話しをすすめてくれています。ROI、TCOなどの基本的な考え方、バランスドスコアカードとKPIやKGI、ディスカウントキャッシュフローなどの概要を学ぶことができます。SEのために書かれているということもあって、最後は投資の判断というよりは、投資が決まったシステム構築をいかに投資対効果を意識しつつ開発していくかという議論になっています。


山岸 耕二 安井 昌男 萩本 順三 河野 正幸 野田 伊佐夫 平鍋 健児 細川 努 依田 智夫 [要求開発アライアンス]
日経BP社(2006-03-02)



要求定義のフェーズの手法の体系化をめざしたOpenthlogyの解説書です。コンセプトも内容もなかなか良くできています。特にプロセスは非常によくできていて、要求定義をする立場の人には、作業にモレが無いかなど参考にすると良いでしょう。ただし、この本の通りにやれば良いかと言われると、実際の現場ではそうでもないことがほとんどです。要求開発という名前の「開発」という部分に期待しすぎてもすこし期待を裏切られるでしょう。純粋に要求定義の良い”教科書”として読むことをおすすめします。




SEとして現場でどのような行動を取るべきかの経験談をまとめてある本です。長年IT業界でやってきた筆者が、現場の経験を踏まえてSEとSEマネージャーとしてどのようなことを行って成功してきたかを50の鉄則にまとめてあります。くりかえしの内容も多いのですが、、飾り気がなく経験に裏打ちされた具体的な内容は現場で活用するときにとても参考になります。


G.M.ワインバーグ 木村 泉 ジェラルド・M・ワインバーグ
共立出版(1990-12)



コンサルタントとしての原則とはなにかを面白おかしく解説している本。私も人にすすめられて読みました。何度読み返しても、新たな発見がある本です。自分自身がコンサルタントであるか、コンサルタントと一緒に仕事をする機会のある方はぜひ一度読んでみていただきたいと思います。ラズベリージャムの法則、オレンジジューステストなど、ネーミングも面白いものがいっぱいです。




実践に即した、ソフトウェア開発プロジェクトの勘所を解説している本。体系的な本というよりは、現場でのTipsや日本におけるソフトウェア開発の考え方の本質的な部分を解説してくれていてなかなかためになる。読み物として、プロジェクト型のソフトウェア開発に関わる方におすすめ。ただし、PMBOKなど、王道の体型についての知識がないと勘違いする場面もでてくるかもしれません。




ソフトウェア開発技術者試験の午前対策用のハンドブック。分厚い対策本が多い中で、コンパクトにまとまった本書は電車の中などでも読みやすく、忙しい職務の合間に勉強を進めるIT技術者には、ありがたいアイテムです。(合格しました!)




SEのための会計知識入門の本。会計システムという視点から見た仕訳を中心に解説してあります。後半はデータベース構造の議論なども入っており、会計システムについて一通りの事を学ぶことができます。あとは、個別に必要な部分を別の情報源から詳しく調べれば良いでしょう。次は決算書の読み方などに進むのが良いかもしれません。


IBMビジネスコンサルティングサービスIT戦略グループ
日経BP社(2004-01)



IBMビジネスコンサルティングの執筆。非常に良くまとまっていて、Enterprise Architectureとは何かということを理解することができると思います。EAという概念は抽象的であり、策定の方法や目的などは企業によって千差万別だということをきちんと強調していて、それを踏まえたうえでいくつかの導入パターンを解説している部分は特によいと思います。ただし、本書の真ん中の何章かにわたって解説している、BA、AA、DA、TAの部分については、いまいちでした。EAとはなにかということをイメージアップするにはよい書だと思います。




はやりのEnterprise Architectureの本。日経BPの雑誌の編集らしく、非常にいろいろな人の意見や考えかたが書かれている。体系だってはいないので、入門用としてはちょっと厳しいかもしれません。EAの基本コンセプトを理解したうえで、読み物として読むと非常に興味深いと思います。特に面白いのが書くベンダーごとのEAの考え方と、松下、東京三菱などすでにEAを導入しているところのEAの考え方。基本コンセプトは一緒だが、それぞれの企業哲学に基づいてきちんと解釈をしています。




みずほ銀行が発足した当時のATMのシステム障害はニュースにもなり非常に話題にのぼりました。迷惑をこうむった人もたくさんいたことでしょう。普段あたりまえのように動いているコンピュータだがひとたび動かなくなると社会的にもほんとうに大変なことになることが良くわかります。いかにITが経営と結びついているか、良い教訓でもあります。経営者の方々はITをもっと重要視して、企業の発展の原動力にしていただきたい。IT技術者は徹夜の連続できちんと評価されないという体質を改善しないと、みすみす優秀なIT技術者を社内から失うことになります。そのときになって経営ががたがたになっても遅いのだと思います。




企業戦略という視点からみた、IT戦略の本です。SCM、ERPといったシステム導入をどのようにして企業戦略に結びつけるかを、わかりやすく書いてあります。特にシステム導入の失敗例をいくつか挙げていて、その原因も分析されているところが有効な情報となりました。アウトソーシングについても基本的な戦略の立て方が解説してあり参考になります。




SEのためのと書いてありますが、SEでなくとも資料をつくる仕事をしている人は読んで損のない本と思います。図の種類と使い方を理論立てて解説してくれています。私が特に納得したのは、図解には大きく分けて、プレゼンテーションなどに使う、とにかくわかりやすくシンプルな図と、複雑な状況をきちんともれなく記述した設計図のような図の2種類あるということです。そして具体的には、UML、ER図からグラフ、テーブル、ツリー、ブロックダイアグラムなど、規格的な図から、一般的な図までどのような”目的”で使うかを理解させてくれます。


 

 


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