ハーバード・ビジネス・レビュー


ビジネス界の論文集であるハーバード・ビジネス・レビューでは最新のビジネス理論を学ぶことができます。
1冊ずつ、本屋やAmazon.co.jpなどで購入することもできますが、ダイヤモンド社から定期購読をするとお得です。

ここでは、特に気に入った記事をピックアップして概要を紹介したいと思います。
自分なりの解釈で大幅に要約をしていますので、きちんと読みたい人はぜひ本を読んでください。


2005年9月号

9月号で気に入った記事は以下の通り

メイドインジャパンを鍛える
松下電器の社長である中村氏の書いた記事ですが、日本にとっての製造業の大切さが伝わってくる内容です。日本の経済をささえる力をもつ産業であり、日本人の資質である勤勉さを最大限に生かすことのできる産業であるということです。実際に日本の貿易黒字を単独で支えているのは製造業であります。また最後にはITなくして経営革新なしとも言っています。21世紀型のビジネスを行うためにはITの力は不可欠で、アメリカに比べて日本はまだITをうまく活用しきれていないということを資料を示しながら教えてくれています。

ポジティブ・デビアンス
トップダウン型の業務改革はなかなか進まないし、効率が良くありません。会社の大方針や、大幅な方向転換を行うときはトップ主導の舵取りが必要でしょうが、日々の業務改善は現場主導型でということです。トヨタの改善活動に通じるものがあります。この記事でのフォーカスは、同じ環境でうまくやっている人を見習うということにあります。従来のベストプラクティスは外から来た知識でした。もちろん学習するべき事はたくさんありますが、すべてがすべてその会社に合っているかと言われるとそうではありません。うまくいくかどうか半信半疑のままであれば、社員のモチベーションもあがりません。ところが社内のベストプラクティス=まったく同じ環境で驚くほど成果を上げている方法を全社に浸透させるやりかたをとれば、非常に効果の高い改善を行うことができます。

摩擦のマネジメント
社内で起こる摩擦をどうしたらよいかというテーマです。解決法は、摩擦を無くそうとするのではなく、摩擦をコントロールしようとすることです。摩擦は無くならないという現実的な視点に立って摩擦が起きたときにどう対処するのが良いか、どうしたら摩擦をポジティブなエネルギーに変えることができるのかということを組織として学習しなくてはならいということになります。具体的な例を挙げますと、IBMではコンフリクト・マネジメント・システムというコンピューターシステムがあり、部下からの摩擦発言に対して、どのように答えるのが良いのかというのがデータベースとして蓄積されているそうです。これによって、摩擦を部下のモチベーションアップにつなげたり、問題の解決を探るきっかけとすることができます。


2005年8月号

8月号で気に入った記事は以下の通り

リーン消費
製造業の製造過程ではあまりにも有名になったリーン生産方式だが、これを顧客とのインターフェイスに応用することで、さらなるビジネスチャンスを得ることができるということです。
キーポイントは顧客の資産稼働率をいかに少なくするかを考えることで、顧客にとってのメリットが最大化するということになります。たとえば、サービス業であれば顧客の資産である時間の消費を最小限にする、つまりいかに顧客の待ち時間を少なくできるかということを考えると良いということです。
記事には成功例や、科学的に分析してリーン消費を実現していく方法論などが紹介されています。

「脱」コモディティ化の成長戦略
リーン消費と似たような論文ですが、この論文では顧客の資産稼働率をいかに低くするかということに注力する上で、顧客にとってどの資産が一番大事かを考えなさいということを言っています。そしてそれが既成産業の常識的なサービスの目標と異なっていれば、そこから新しいビジネスチャンスが生まれると言うことになります。
例としてあげられているのがセメント会社のセメックスで、メキシコではコンクリートの値段より、いかに確実に配送されるかの方が重要であった。お金という資産より、時間という資産のほうがはるかに重要だったという事例が紹介されています。

「脱」ライフサイクルの市場戦略
マーケティングのベルカーブ理論を打破するには、どのような戦略をとれば良いかということの議論です。「脱」ライフサイクルの市場戦略には3つあります。

1.リバースポジショニング:余計なオプションを排除し、意外性の高い属性を負荷することで、成熟期に戻すことができる。サービスに有効。例:IKEA、コマースバンク、ジェットブルー

2.ブレークアウェイポジショニング:商品の特徴をまったく異なるカテゴリと一体化させることで、成熟期に戻すことができる。製品に有効。例:スウォッチ、シンプソンズ

3.ステルスポジショニング:マイナスイメージの商品のポジショニングを変更することで、良いイメージを喚起し、成長させる。新興市場に有効。 例:アイボ、マックミニ

これらの戦略で、成熟期を過ぎた産業や、新興市場への参入を、ベルカーブのライフサイクルにとらわれすに実現することができるかもしれないということです。こういったマーケティングを展開できる会社は、今後おもしろいでしょう。


2005年7月号

7月号で気に入った記事は以下の通り

選択バイアス
統計上のウソのひとつである、選択バイアスについての論文です。たとえばある戦略について現存する企業を対象にして調査を行った場合、同じ戦略をとってうまくいかずにつぶれてしまった企業についてはデータが集められないということ。
おもしろい寓話は、第2次世界大戦で爆撃機の被弾箇所の調査をしたとき、被弾した飛行機の被弾箇所の統計は、帰還した飛行機のみのもの。実際に強化するべきは被弾していない部分。本当に被弾してはいけないところに被弾した飛行機は撃墜されているはずであるから、 という話。
現在は統計的手法を用いて選択バイアスを処理することができる。

戦略プランニングと思考戦略
戦略プランニングは戦略をどう実行するかという実行レベルのプランニング。戦略思考はビジョンを描いたり、もうすこし抽象的なものになる。
このちがいは明確にして、行動しなくてはならないということを説いている。

アノマリーの採用
アノマリー(類似例)を採用するには、その類似点だけでなくその相違点にも注目しなくてはならないという論文です。単純に似ている点だけを強調して、それを応用した戦略をもちいるのはあまりにも危険すぎる。きちんと類似点と相違点の双方を分析しなくてはならないということです。きちんと相違点まで分析することで説得力がますのです。
類似点を強調したプレゼンテーションや企画書を書くときには気をつけなくてはならないでしょう。


 

 


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